多くの証券会社では、株式を購入するプランを2つ用意しています。1つのプランのみ提供している証券会社もあります。例えば松井証券では、1日定額プランのみ提供しています。
- 1注文の約定代金に対して手数料がかかるプラン
- 1日の約定代金合計額に対して手数料がかかるプラン
SBI証券の場合であれば、1のプランを「スタンダードプラン」、2のプランを「アクティブプラン」と呼んでいます。
証券会社ごとの現物取引の手数料と信用取引の手数料については以下の記事で徹底的に比較しています。
今回は「1注文の約定代金に対して手数料がかかるプラン」を前提に話を進めていきます。
現引き・現渡しとは?
現引き・現渡しは、信用取引の決済方法です。
信用取引で株式を買った場合の決済方法
信用取引で株式を買う場合は、証券会社から借りたお金で株を買います。このときお金を借りてるわけですから、日ごとに金利が発生します。決済する時は、借りたお金で買った株を売却します。その売却金額を証券会社に返します。この決済方法を、返済売り(返売)といいます。
返済売りが信用取引で買い建てた場合の一般的な決済方法ですが、他の方法でも決済することができます。その方法に、現引き(品受け)があります。現引きの手数料は無料です。
現引きを使うと、信用取引で買い建てた株式を手元にある現金で引き取ることができます。つまり現引きを使うと現物株に無料で交換することができます。
信用取引で株式を売った場合の決済方法
信用取引で株式を売ることを「空売り」といいます。空売りは、証券会社から借りた株を市場で売却します。このとき株式を借りてるわけですから、日ごとに貸株料が発生します。決済する時は、借りた株式を買い戻して証券会社に返済します。この決済方法を、返済買い(返買)といいます。
返済買いが信用取引で売り建てた場合の一般的な決済方法ですが、他の方法でも決済することができます。その方法に、現渡し(品渡し)があります。現渡しの手数料は無料です。
現渡しを使うと、信用取引で売り建てた株式と同銘柄・同株数の現物株式を差し入れて返済できます。つまり株を買い戻して返却する必要がなく、保有している現物株を返却することで決済できます。
現引き・現渡しで手数料を節約する方法
ほとんどの証券会社では、現物取引と信用取引では手数料が違います。その違いを利用して節約します。
現物取引と信用取引の手数料一覧(例:SBIの場合)
スタンダードプラン(1注文の約定代金に対して) | |||
---|---|---|---|
現物取引 | 信用取引 | ||
5万円まで | 税込54円 | 10万円まで | 税込97円 |
10万円まで | 税込97円 | ||
20万円まで | 税込113円 | 20万円まで | 税込145円 |
50万円まで | 税込270円 | 50万円まで | 税込194円 |
100万円まで | 税込525円 | 50万円超 | 税込378円 |
150万円まで | 税込628円 | ||
3,000万円まで | 税込994円 | ||
3,000万円超 | 税込1,050円 |
全体的に信用取引の方が安いです。特に50万円を超えると手数料の差が顕著になります。現物取引の場合は3,000万円を超えれば定額になりますが、信用取引の場合は50万円を超えれば定額です。
ただし、信用買いの時には金利が、信用売りの時には貸株料が発生します。
SBI証券の金利は、制度信用が2.80%、一般信用が3.09%です。貸株料は、制度信用が1.15%、一般信用の無期限が2.00%、短期が3.90%です。
「制度信用取引」は、証券取引所が公開している制度信用銘柄選定基準をクリアした銘柄です。返済期限は6ヶ月以内と決められていて、金利も証券取引所ごとに決められています。
一方の「一般信用取引」は、証券会社と投資家との間で自由にルールを取り決めて行われる信用取引です。証券会社によって返済期限や金利、取扱い銘柄などが違います。売建ての場合は証券会社によって取扱い銘柄数は大きく異なりますが、買建てであれば多くの証券会社では全銘柄を取り扱っています。
「現引き」を使った手数料の節約方法
現引きを使ったらどのぐらいお得なのかを実際に検証します。現引きは手数料不要ですが、信用取引で買い建てた時から金利が発生します。
信用取引で買い建てた株式を「現引き」で当日中に現物の株式に変更すれば、金利を最低限の1日分に抑えられます。
SBI証券の場合の1日あたりの金利は次の表を参考にしてください。「現引き」を使った方が手数料を節約できるところは赤字になっています。
買建金額 | 信用取引 手数料 | 制度信用 | 一般信用 | 現物取引 手数料 | ||
---|---|---|---|---|---|---|
金利 (2.80%) | 手数料 | 金利 (3.09%) | 手数料 | |||
5万円 | 97円 | 3円 | 100円 | 4円 | 101円 | 54円 |
10万円 | 7円 | 104円 | 8円 | 106円 | 97円 | |
20万円 | 145円 | 15円 | 160円 | 16円 | 161円 | 113円 |
30万円 | 194円 | 23円 | 217円 | 25円 | 219円 | 270円 |
40万円 | 30円 | 224円 | 33円 | 227円 | ||
50万円 | 38円 | 232円 | 42円 | 236円 | ||
60万円 | 378円 | 46円 | 424円 | 50円 | 428円 | 525円 |
70万円 | 53円 | 431円 | 59円 | 437円 | ||
80万円 | 61円 | 439円 | 67円 | 445円 | ||
90万円 | 69円 | 447円 | 76円 | 454円 | ||
100万円 | 76円 | 454円 | 84円 | 462円 | ||
150万円 | 115円 | 493円 | 126円 | 504円 | 628円 | |
200万円 | 153円 | 756円 | 169円 | 547円 | 994円 | |
300万円 | 230円 | 608円 | 253円 | 631円 | ||
500万円 | 383円 | 761円 | 423円 | 801円 | ||
600万円 | 460円 | 838円 | 507円 | 885円 | ||
700万円 | 536円 | 914円 | 592円 | 970円 | ||
800万円 | 613円 | 991円 | 677円 | 1,055円 | ||
1,000万円 | 767円 | 1,145円 | 846円 | 1,224円 | ||
2,000万円 | 1,534円 | 1,912円 | 1,693円 | 2,071円 | ||
3,000万円 | 2,301円 | 2,679円 | 2,539円 | 2,917円 | ||
4,000万円 | 3,068円 | 3,446円 | 3,386円 | 3,764円 | 1,050円 |
ほとんどの場合は、「現引き」を使って取引をした方が手数料を節約できます。1回の取引で節約できるのは、わずか数百円程度ですが、塵も積もれば山となります。1回の取引で100円節約できれば、10回の取引だと1,000円、100回の取引で10,000円の節約です。
ただし上記の表は、あくまで1日の金利の場合です。日をまたぐと2日分かかります。そうなると信用取引の手数料の方が高くなる場合が多いので注意してください。
「現渡し」を使った手数料の節約方法
現引きと同じように現渡しでも手数料を節約できます。現渡しを使ったらどのぐらいお得なのかを実際に検証します。現渡しは手数料不要ですが、信用取引で売り建てた時から貸株料が発生します。
信用取引で売り建てた株式を「現渡し」で当日中に現物の株式で返済すれば、貸株料を最低限の1日分に抑えられます。
SBI証券の場合の1日あたりの貸株料は次の表を参考にしてください。一般信用の貸株料は、株主優待タダ取りで使われる短期で計算しています(無制限は表示していません)。「現渡し」を使った方が手数料を節約できるところは赤字になっています。
売建金額 | 信用取引 手数料 | 制度信用 | 一般信用(短期) | 現物取引 手数料 | ||
---|---|---|---|---|---|---|
貸株料 (1.15%) | 手数料 | 貸株料 (3.90%) | 手数料 | |||
5万円 | 97円 | 2円 | 99円 | 5円 | 102円 | 54円 |
10万円 | 3円 | 100円 | 10円 | 117円 | 97円 | |
20万円 | 145円 | 6円 | 151円 | 21円 | 166円 | 113円 |
30万円 | 194円 | 9円 | 203円 | 32円 | 226円 | 270円 |
40万円 | 12円 | 206円 | 42円 | 236円 | ||
50万円 | 15円 | 209円 | 53円 | 247円 | ||
60万円 | 378円 | 18円 | 396円 | 64円 | 442円 | 525円 |
70万円 | 22円 | 400円 | 74円 | 452円 | ||
80万円 | 25円 | 403円 | 85円 | 463円 | ||
90万円 | 28円 | 406円 | 96円 | 474円 | ||
100万円 | 31円 | 409円 | 106円 | 484円 | ||
150万円 | 47円 | 425円 | 160円 | 538円 | 628円 | |
200万円 | 63円 | 441円 | 213円 | 591円 | 994円 | |
300万円 | 94円 | 472円 | 320円 | 698円 | ||
500万円 | 157円 | 535円 | 534円 | 912円 | ||
600万円 | 189円 | 567円 | 641円 | 1,019円 | ||
700万円 | 220円 | 598円 | 747円 | 1,125円 | ||
800万円 | 252円 | 630円 | 854円 | 1,232円 | ||
1,000万円 | 315円 | 693円 | 1,068円 | 1,446円 | ||
2,000万円 | 630円 | 1,008円 | 2,136円 | 2,514円 | ||
3,000万円 | 945円 | 1,323円 | 3,205円 | 3,583円 | ||
4,000万円 | 1,260円 | 1,638円 | 4,273円 | 4,651円 | 1,050円 |
結果は、「現渡し」の場合も「現引き」と同じような結果になりました。
ほとんどの場合は、「現渡し」を使って取引をした方が手数料を節約できます。株を取引した方が手数料を節約できます。1回の取引で節約できるのは、わずか数百円程度ですが、塵も積もれば山となります。1回の取引で100円節約できれば、10回の取引だと1,000円、100回の取引で10,000円の節約です。
ただし上記の表は、あくまで1日の貸株料の場合です。日をまたぐと2日分かかります。そうなると信用取引の手数料の方が高くなる場合が多いので注意してください。
まとめ
ほとんどの場合では、「現引き」と「現渡し」を利用すれば、手数料の低コスト化を実現できます。上手く信用取引を取り入れて積極的に手数料を節約してください。
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